母の「行きたい」を見守る日

歩行器を押しながら駅前で手を振る高齢の母のやさしいスケッチイラスト
目次

小さな挑戦を、手を出しすぎずに見守るということ

足腰が弱ってきた親を、
どこまで手伝えばいいのか。

そんなことを考える場面はありませんか。

手を貸した方がいいのか?
見守った方がいいのか?
  
危ないから止めた方がいいのか?
それとも、本人の「行きたい」を信じた方がいいのか。

どこまでが、母の甘えか?違うのか?
と悩んでしまうこともあります。

昨日は、そんなことを深く考える一日でした。

年に2回の母へのプレゼント

私は年に2回、母にホテルの宿泊をプレゼントしています。

行き先は、母の好きな神戸のシェラトンホテル
温泉がついている、マリオット系列のホテルです。

最初は、母の誕生日のプレゼントとして始めました。

でも今は、ただの旅行ではありません。

母に、少しでも前を向いてほしい。
痛みやしびれの中だけで一日を終えるのではなく、
「また行きたい」と思えること
ワクワクする夢を持ち続けて欲しい

そんな気持ちで、春と秋の気候のいい時期に予約をしています。

私が連れて行くのではなく、二人で行く

以前は、私が母を連れて行っていました。

でも、どうしても私が付き添うと、
どこか介護のような形になってしまいます。

私も気を張りますし、
母もどこか「連れて行ってもらっている」形になる。

そこで前回からは、母の妹である叔母にも宿泊をプレゼントし、
二人で行ってもらうことにしました。

それが、2人の喜びになり
姉妹が、仲良くなるきっかけにもなりました。

母は80歳。階段から何度も落ち一級障害者の手帳も持っていました。
叔母も病気を抱え、たくさんの薬に支えられながら暮らしています。

そんな姉妹は、いつまで二人で出かけられるか
わかりません。

だからこそ、こんな思い出づくりが
とても大切に感じます。

小さな段差が怖くなった母

母は昔、本当に運動神経のいい人でした。

私が子供の頃の運動会では、
町内のリレーには、必ず母が出場しました。

どんどん人を抜いて、駆け抜けていくかっこいい母。
みんなの憧れの存在でした。
 
運動が苦手だった私は、よく怒られた記憶があります。

そんな母が今は、
ほんの1センチほどの段差にも怖がります。

小さな段差。
駅の入口。
エレベーターまでの道。
少しの傾斜。

昔は何ともなかった場所が、
今の母にとっては大きな不安になるのです。

人は、こんなにも変わっていくのだと思いました。

手を出すことと、見守ることの間で

本当は、私が送り迎えをした方がよかったのかもしれません。

足が痺れて動けない母を、昨日まで私も部屋を予約していました。
送り迎えをしようと思ったのです。

ギリギリまで悩みましたが。

でも母は、
「友見は来なくていい。」
「自分で行ける」
「妹と二人で行きたい。」
というのです。

その気持ちを、信じることにしました。
もちろん不安はあります。

転ばないか。
迷わないか。
疲れすぎないか。

でも、生きるというのは、
何もかも危ないからやめることではないのかもしれません

できることを、減らさないように、
本人の気持ちを残していくことも、
とても大切なのだと思います。

親にも、子どもにも同じこと

これは親だけの話ではありません。

子どもに対しても同じです。

心配だから、先に手を出したくなる。
危ないから、やめさせたくなる。
失敗しないように、道を整えたくなる。

でも、その人の人生は、
その人が歩くものです。

親であっても、子どもであっても、
「やってみたい」という気持ちを奪いすぎてはいけない。

挑戦は、大きなことだけではない

挑戦というと、つい
何か特別なことのように思います。

でも、年齢を重ねた人にとっては、
 
駅まで行くこと。
エレベーターを探すこと。
自分でホテルに向かうこと。
姉妹で一泊すること。

それだけでも、大きな挑戦です。

そしてその挑戦は、
「まだ私は行ける」
「まだ私は楽しめる」
という気持ちを支えてくれるのだと思います。

暮らしは、最後まで前を向くためにある

住まいや環境は、
ただ便利にするためだけのものではありません。

人が前を向くため。
怖くても、もう一度出かけてみようと思うため。
誰かと一緒に、思い出をつくるため。

そのために、段差や動線や駅の使いやすさは、
とても大きな意味を持ちます。

母の小さな背中を見送りながら、
暮らしを整えることは、
人生の最後の方まで希望を残すことなのだと感じました。

最後に

いつまでできるかは、誰にもわかりません。

でも、できる今日があるなら、
その今日を大切にしたい。

手を出しすぎず、
突き放しすぎず、
その人の「行きたい」を信じて見守る。

今回の母と叔母の小さな旅は、
私にとっても大きな学びになりました。

母は強運なので、天気は快晴!
大きく「行ってきます」
駅まで、お見送りした時の写真です。

今日は、きっと笑顔で帰ってくるでしょう。

母は、自分のラジオでもこの旅のことを話していました。
よかったら、661回目の放送も↓聴いてみてください。

stand.fm
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この記事を書いた人

片山友見のアバター 片山友見 夢育の母

住宅設計プランナー歴35年!夢実現できる住まいを形にする「夢育の母」建築士。建設会社を営む両親のもと、家づくりが身近な環境で育ち宮大工工務店に嫁ぐ。自ら設計した検証住宅で住職一体の暮らしを続けながら、お客様の家の設計をする中で、住まいが性格や家族関係に与える大きな影響に着目。その経験を活かし住まいの悩みを解決するコンテンツを多数開発。書籍5冊を出版し住まいの情報発信にも力を入れている。

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